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「聴導犬」について

血統が重視される「盲導犬」と異なり、「聴導犬」は、動物保護管理センターや保健所などで保護された犬から“適性”を判断して候補犬が選ばれます。

というのも、「聴導犬」の場合、「音を仲間に知らせる」のは犬の本能でもあるので、犬種に制約がないからです。※1

そのため、候補犬は様々な種類、様々なサイズで良く、訓練を行なう中でも、「聴導犬」としての“適性”が重視されます。

①「聴導犬」ってどんな犬?

日本聴導犬協会の有馬さんによると、「聴導犬」は、“限りなく人間に近い犬”だそうです。

“犬らしさ”を失わずに、“人間らしさ”も持っているような、ストレスに強く、フレンドリーで
“仕事好き”な性格が、「聴導犬」の“適性”です。

具体的には、まず、「聴導犬」には社会性が求められます。様々な環境で働くので、
雑音や雑踏でも落ち着いていることができ、人や他の動物に対して友好的でなければいけません。

もちろん、「聴導犬」として働く為には、精神的にも身体的にも健康であることが不可欠です。

また、自分の寝床や食べ物に対する所有欲がなく、おっとりした性格の犬が向いています。

そして、何よりも大切なのは、ユーザーと一緒にいることが好きで、“仕事”を生きがいにできる
犬たちだということなのです。※2

② ファン・トレーニングって何?

(福)日本聴導犬協会では、まず候補犬はソーシャライザー(犬を愛情一杯に育て、社会化させるボランティア)に2か月から10か月間預けられ、社会化や基本的なしつけを受けます。※3

その後、候補犬は協会に戻り、高度な社会化や聴導動作のトレーニングを最低でも4ヶ月から6か月間
受けます。

基本的なしつけのトレーニングでは、「座る、伏せる、待つ、合図をしたら来る」といった指示に、
声だけでなく、手の合図だけでも従えるようにすることが目的です。

また、高度な社会化では、公共施設や商業施設、飲食店や交通機関など、様々な環境に連れて行き、
様々な刺激に鈍化させるトレーニングもします。

一方、聴導動作のトレーニングでは、「音がしたことを人に知らせる」「音がした所を探す」
「音がした所へ人を連れて行く」といった動作を教えます。

つまり、「聴導犬」は、ユーザーの命令ではなく、必要な音を判断して「自分で考えて行動する」
ようにならないといけないのです。※4

そんな「聴導犬」のトレーニングでは、ファン・トレーニングという方法が用いられています。

ファン・トレーニングとは、言葉のとおり、“犬が楽しく学ぶ”ことを目的としています。犬をゲーム感覚で楽しませながら、上手にできたときは褒めてあげたり、“ご褒美”をあげたりします。

しかし、人間が思う“楽しさ”を犬に押しつけるようなことがあってはいけません。例えば、チーズが嫌いな犬に“ご褒美”としてチーズをあげても、その犬は全く楽しくないはずです。※5

“何が楽しいか”は、犬によって異なるので、“それぞれの犬が喜ぶこと”を把握しなければいけません。

ファン・トレーニングでは、常に“犬に対する尊厳”を忘れないことが大切です。

先程、「聴導犬」には“限りなく人間に近い犬”が向いているというお話をしましたが、だからといって、そうなるように犬を強制することはトレーニングの目的ではありません。

「聴導犬」のトレーナーの役目は、“犬らしさ”を尊重しつつ、一頭一頭の心の声を“聴き”、それぞれの
気質や才能を見極めて、活かしていくことなのです。

③ 「聴導犬」のトレーナーってどんな人?

「聴導犬」のトレーナーがやりがいを感じるのは、「育成した犬が聴導犬となり、ユーザーの人生が変わるとき」です。「聴導犬」との暮らしは、ユーザーのライフスタイルだけでなく、考え方や性格にも大きく影響します。そんなユーザーの姿を見ることが、トレーナーの仕事の励みになることは、言うまでもありません。

「聴導犬」のトレーナーには、知識やスキルだけでなく、柔軟な発想や忍耐力も必要です。

ですが、トレーナーが最も苦労することは、実は犬のトレーニングではなく、「ユーザーとのコミュニケーション」なのです。例えば、あるとき、ユーザーがすぐに「分かった、分かった」と言うけれど、結局理解していなくてトレーニングが進まなかったことがあったそうです。

トレーナーは何故そう言うのか分からず困ったそうですが、しばらくして、その方が、過去に「何度も同じ質問をして怒られる」という経験をしてきた為、怖くて聞き返すことができなかったということが明らかになったそうです。

ユーザーのことを理解し、ユーザーにも自分のことを理解してもらうために、時間と労力を懸けて絆を築くことが大切です。ユーザーに共感を持って指導することが、トレーナーには求められているのです。

「聴導犬」のトレーナーは、犬やユーザーの生き方そのものに深く関わります。

イギリスでは、ドッグトレーナーを“アーティスト”と呼んでいるそうですが、まさに、「聴導犬」のトレーナーは、犬やユーザーが今まで知らなかったような喜びや感動をクリエイト(創造)し、毎日をより輝いてもらう為のお手伝いをする存在なのです。

※1 学研ムック『うちの犬(コ)が「おりこう犬」に大変身!―「困ったクセ」が「役立ち行動」に!』(学研 2005年)

※2 厚生労働省では、次のような適性を挙げています
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/syakai/hojyoken/html/a04.html
(1) 健全で陽気な性格であり、動物や人に対して友好的で臆病でないこと。
(2) 人と一緒にいることを好むこと。
(3) 他の動物に対して強い興味を示さず、挑発的な行動をしないこと。
(4) 攻撃的でなく、過剰な支配的性質を有していないこと。
(5) 環境の変化に神経質でなく、落ち着いていられること。
(6) 平均的な触覚、聴覚及び感受性を有していること。
(7) 集中力と聴導動作への積極性及び環境への順応力があること。
(8) 乗り物酔いがないこと。

※3  日本聴導犬協会では、聴導犬になるまでに12段階あります(http://www.hearingdog.or.jp/process.htm)
1.候補犬選び 2.社会化(2~10ヶ月) 3.候補犬適性再チェック 4.社会化の継続 5.マッチング(希望者との相性確認) 6.候補犬訓練前テスト 7.訓練(4ヶ月以上) 8.訓練犬最終テスト(再度マッチング) 9.合同訓練(2週間の訓練所滞在、3か月間のユーザー自宅訓練) 10.訓練修了試験 11.認定試験 12.認定

※4 有馬もと『マンガでわかる聴導犬』(明石書店 2012年)

※5 同じように、散歩があまり好きではない犬を、“ご褒美”として散歩に連れていっても、むしろ不快にさせてしまうかもしれません。“ご褒美”は、好きなオヤツがある場合はその気に入っているオヤツをあげたり、知的欲求の高い犬は知育玩具で遊ばせてあげたりするのが良いでしょう。また、その時々の「状況」を把握することも大切です。例えば、トレーニングが好きな犬であっても、排尿を我慢していたら楽しむことができません。でも、最高の“ご褒美”は、飼い主さんの笑顔と「褒め」だと理解しましょう。

この記事は、社会福祉法人日本聴導犬協会会長の有馬もとさん(政策研究博士)にインタビューをご協力頂き、作成しました。

有馬さんは、補助犬ジャーナリストで、日本初のADI国際認定聴導犬及び介助犬インストラクターになられた方で、補助犬ジャーナリストとして精力的に活動されています。

英国エジンバラ大学大学院社会科学修士、ケント大学大学院文学ディプロマも取得されています。

幅広い知識と経験を活かし、『人はなぜ犬や猫を飼うのか』(大月書店、1996年)、『アシスタンス・ドッグ』(大月書店、1999年)、『身体障害者補助犬法を知っていますか』(大月書店;2003年)、『うちの犬(コ)が「おりこう犬」に大変身!―「困ったクセ」が「役立ち行動」に!』 (学研、2005年)、『マンガでわかる聴導犬』(明石書店、2012年)など、著書も多く執筆されています。

また、有馬さんの最新の活動については、ウェブサイトで知ることができます:
http://blog.goo.ne.jp/moto_taka/

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